データベースの設計や運用において、トランザクションの理解は非常に重要です。
特に、システムの信頼性やデータの一貫性を保つためには、トランザクション管理をしっかりと把握しておく必要があります。
しかし、実際に業務でシステムを運用する際には、トランザクションの仕組みを意識することなく、日々多くの操作を行っていることがほとんどです。銀行の振込処理のような日常的な処理でも、トランザクションがどのように機能しているのか、深く理解していると、システムの信頼性やパフォーマンスを高めることができます。
今回は、トランザクションの基本的な概念から、ACID特性について詳しく説明し、実際の業務における利用方法やその重要性を見ていきます。

トランザクションは処理速度なんかにも関わってくる!
トランザクションとは?
トランザクションとは、
「データベースにおける一連の操作をひとまとまりとして管理する」
ための概念です。
データベースに対する複数の操作(レコードの更新や削除、挿入など)がある場合、これらを一つの「取引」や「作業単位」として扱うことができ、すべてが正常に完了する(コミットされる)か、全てがキャンセルされる(ロールバックされる)かという形で、整合性を保ちます。
例えば、銀行の振込処理を考えてみます。
ある顧客の口座から他の口座にお金を振り込む際、振込金額の引き落としと受け取りの2つの操作が必要です。この操作が、途中で失敗した場合、データの整合性が崩れてしまう恐れがあります。
そこでトランザクションを利用することで、すべての操作を一つの単位として処理し、どこかでエラーが発生した場合には、それまでの操作をすべて取り消し(ロールバック)することができます。

ACID特性:トランザクションの信頼性を保証するための基本原則
トランザクションは、単に操作を一つのまとまりとして扱うだけでなく、その実行結果がシステムにおいて信頼性を持つことが求められます。
それを保証するのが、ACID特性です。
このACIDという言葉は、以下の4つの重要な特性から成り立っています。
これらの特性がしっかりと守られることによって、トランザクション内で行われるすべての操作が安全かつ確実に実行され、万が一の障害発生時にもデータが損なわれないようになっているのです。
Atomicity(原子性)
原子性は、トランザクション内で行われるすべての操作が「ひとまとまり」であることを意味します。
具体的には、トランザクション内の処理がすべて成功するか(コミット)、あるいはすべて失敗して元に戻る(ロールバックされる)ということです。この特性を保障することで、部分的に処理が進んだ場合にデータが不整合な状態になることを防ぎます。
先述した振込処理で考えると、口座Aからお金が引き落とされ、口座Bに振込金額が追加されるという2つの操作が行われます。この2つの操作は「1つの単位」として扱われ、いずれかが失敗した場合は両方ともキャンセルされます。これにより、不整合な状態が避けられます。

Consistency(一貫性)
一貫性は、トランザクションが開始する前後で、データベースの状態が常に一貫していることを保証する特性です。
トランザクションが成功すれば、データはビジネスルールや制約に従って整合性が保たれます。一方で、何らかの理由でトランザクションが失敗した場合、データベースは変更前の状態に戻ります。
上記の画像のように、振込処理で口座Aからお金を引き落とし、口座Bに振込金額を加算する操作があった場合、これらが両方成功すれば、データは整合性が保たれた状態になります。
しかし、途中でエラーが発生した場合、両方の操作が取り消され(ロールバック)、元の状態に戻ります。これにより、データが一貫して保たれます。
Isolation(独立性)
独立性は、複数のトランザクションが同時に実行される場合でも、互いに干渉しないことを保証する特性です。
具体的には、あるトランザクションの途中結果が他のトランザクションから見えないことを意味します。つまり、他のトランザクションが終了するまで、途中の結果を他のユーザーに提供しないことで、データの不整合を防ぎます。
例えば、二人のユーザーが同時に振込処理を行っていた場合、どちらか一方の振込処理が完了するまで、もう一方の結果を見せないようにします。これにより、同じデータに対する競合や不整合を防ぎます。
Durability(永続性)
永続性は、トランザクションが一度コミットされると、その変更が永続的にデータベースに保存されることを保証する特性です。
たとえシステム障害が発生した場合でも、コミットされたデータは失われることはありません。
振込例の場合、振込処理が完了した時点で口座Aからお金が引き落とされ、口座Bにお金が加算されます。この結果はシステムが障害を起こしても失われることなく、復旧後もデータが残ります。
トランザクションの実際の動作:コミットとロールバック
冒頭で出た銀行システムの振込処理の口座Aから口座Bへの振込操作は以下のような手順で行われます。
- 口座Aの残高から振込金額の減額
- 口座Bの残高に振込金額を加算
この振込操作全体が一つのトランザクションとして扱われます。
ここでは、原子性が重要になり、もし操作1が成功し操作2が失敗した場合は、口座Aからはお金が引き落とされたが、口座Bには入金されないといった不整合な状態が発生します。
これを避けるために、両操作を一つのトランザクションとして実行し、どちらかが失敗した場合は全ての操作がロールバック(取り消し)されます。
コミット(Commit)
コミットは、トランザクション内の一連の操作を確定させ、データベースに永続的に保存する操作です。
振込処理が無事に完了した場合、口座の残高が変更され、その変更内容はデータベースに保存され、他のトランザクションからも参照可能になります。
例えば、振込操作において次のSQLスクリプトが実行されるとします。
BEGIN TRANSACTION;
UPDATE accounts SET balance = balance - 1000 WHERE account_id = 'A';
UPDATE accounts SET balance = balance + 1000 WHERE account_id = 'B';
COMMIT;
上記のスクリプトでは、まずトランザクションを開始し、口座Aから1000円を引き落とし、口座Bに1000円を加算する操作が行われます。
最後にCOMMITが実行されることで、変更内容が確定し、データベースに保存されます。
ロールバック(Rollback)
ロールバックは、トランザクション内でエラーが発生した場合や、意図的に操作を取り消したい場合に、トランザクション開始前の状態に戻す操作です。これにより、データベースの整合性が保たれます。
もし振込処理でエラーが発生した場合、たとえば口座Bの更新が失敗した場合、次のようにロールバックが実行されます。
BEGIN TRANSACTION;
UPDATE accounts SET balance = balance - 1000 WHERE account_id = 'A';
UPDATE accounts SET balance = balance + 1000 WHERE account_id = 'B';
-- エラーが発生した場合
ROLLBACK;
口座Aから1000円が引き落とされた後、口座Bへの入金が失敗した場合には、ROLLBACKが実行され、口座Aから引き落とされた1000円も元に戻ります。
まとめ:トランザクションの重要性とACID特性
トランザクションは、データベースにおける一連の操作を一貫性のある単位として管理するための重要な概念です。
その基本を支えるのがACID特性であり、これによってデータの整合性とシステムの信頼性が確保されます。
特に、複数の操作が絡む業務システムや金融システムにおいては、トランザクション管理がシステムの安定性を左右します。
より安全で信頼性の高いシステムを作るならば、トランザクションの理解は必須なので、ぜひマスターしておきましょう。