生成AI(人工知能)の進化によって、多くのビジネスがAIを活用する時代が到来しました。
特に、RAG(Retrieval-Augmented Generation)という技術は、AIを一層パワフルにしてくれる注目の技術です。
しかし、RAGの強みを最大限に発揮させるためには、単にデータをAIに投入するだけでは不十分です。
- データの質
- データの整理方法
- プロンプト(AIへの指示)の最適化
- 検索手法
など、様々な要素を細かく管理する必要があります。
特に、ハルシネーションという問題が発生することがあるため、精度向上の工夫が欠かすことができません。
ハルシネーションとは、人工知能(AI)が事実に基づかない情報を生成する現象のことです。まるでAIが幻覚(=ハルシネーション)を見ているかのように、もっともらしい嘘(事実とは異なる内容)を出力するため、このように呼ばれています。
https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/hallucination.html
この記事では、RAGの回答精度を飛躍的に高めるための改善テクニックを、わかりやすく解説していきます。
これを実践すれば、AIがより正確で信頼性の高い回答を提供できるようになり、業務効率の向上や成果アップに繋がることでしょう。

RAGの回答精度が低いから上げたいけど、方法が分からない。

今回は5つのテクニックを紹介していくよ!
そもそもRAGとは?
まず、RAG(Retrieval-Augmented Generation)について簡単な説明から始めましょう。
一言でいうと、RAGは生成AIと情報検索を組み合わせた技術です。
従来の生成AIは、トレーニングデータから学習した知識に基づいて回答を生成を行うことだけ行っていました。
そんな従来の生成AIには以下のような欠点がありました。
トレーニングデータが持っている知識は限られているため、新しい情報や詳細なデータについては不正確な回答を生成してしまう
そこで登場したのがRAGという仕組みです。
RAGでは、AIが事前に学習した知識に加えて、インターネットやデータベースからリアルタイムで情報を検索し、その情報を元に高精度な回答を生成してくれます。

これにより、AIは膨大な情報から最適な回答を引き出すことができ、従来のAIよりも格段に精度の高い結果を提供できるようになりました。
AIに追加学習させる情報は自社のみの情報も可能で、企業特化の生成AIを作成したりすることもできます。
そして、RAGを活用する際に重要なのは、
- 適切なデータ管理
- プロンプト設計
- 検索手法の最適化
です。
これらを駆使することで、AIの精度を飛躍的に向上させることが可能です。
RAGの精度向上のためのテクニック
それでは、RAGの回答精度がより正確で信頼性の高いものにするための具体的なテクニックを紹介していきます。
今回は以下5つの観点から紹介していきます。
データ整備:信頼性の高い情報源の確保
RAGの精度を最大限に引き出すために最も重要なのは、データ整備です。
AIが適切な情報を引き出すためには、検索するデータが正確で信頼性の高いものであることが不可欠です。
データ整備は次の2点に注力する必要があります。
古い情報と新しい情報の整理
古い情報がそのまま使われると、AIが誤った回答をする原因になるため、AIの回答精度を高めるためには、データが常に最新である必要があります。
例えば、会社の規則や製品情報が変更されても更新されていない古い資料を参照すると、AIが間違った情報を提供することになります。
最新知識を用いて回答生成するために、定期的に情報を見直し、最新のデータセットにしておく

メタデータの活用
メタデータは、データに関する追加情報です。
例えばドキュメントには、
- 作成日
- 作成者名
- カテゴリー
などの情報を付け加えることができます。
これにより、AIがデータの優先順位を正確に判断できるようになります。
メタデータを適切に活用することで、AIは最も関連性が高い情報を優先的に参照し、精度の高い回答を生成します。
特に複数の情報源から選択する際に、この優先順位が重要となります。
最も関連性が高い情報を参照させるために、メタデータを活用する
プロンプトエンジニアリング:質問の最適化
プロンプトエンジニアリングは、RAGを効果的に活用するための鍵となる技術で、AIに適切な指示を与えることでより正確な回答を得ることができます。
プロンプトを最適化するための方法をいくつか紹介します。
ロールプロンプトの活用
「あなたは医療の専門家です」
「あなたはエンジニアです」
といった具合に、AIに対して特定の役割を与えることで、より専門的な回答を得ることができます。
例えば技術的な質問に対して、
「あなたはデータサイエンティストです」
と指定することで、AIは専門的な観点からより深い理解を示すことができるようになります。
専門的な観点でより深い理解を示すために、AIに特定の役割を与える

タスクの明確化
AIに求めるタスクを具体的に指示することも重要です。
例えば、
「この文章を要約してください」
「次の質問に簡潔に答えてください」
といった具合に、タスクを明確に指定することでAIはその指示に従い、より正確で簡潔な回答を生成することができます。
AIにはできるだけ具体的な質問、タスクを与える
検索手法の最適化:効率的な情報抽出
RAGの精度向上には、情報検索の手法を最適化することが欠かせません。
AIが膨大なデータから最適な情報を引き出すためには、適切な検索方法を選択することが非常に重要で、主に以下のような種類があります。
これらの検索方法を理解し、状況に応じて最適に活用することで、AIがより精度の高い回答を生成できるようになります。

- シンプルで直感的な検索手法
- 特定の単語やフレーズに基づいた情報が必要な場合に有効
- 意味の異なる同義語や文脈は理解できない
全文検索は、ユーザーが入力したキーワードを基に、データベースや文書内から一致する単語を含む情報を探し出す方法です。
非常にシンプルで直感的な検索手法であり、キーワードがそのまま検索条件となるため、特に特定の単語やフレーズに基づいた情報が必要な場合に有効です。
ただし、全文検索はキーワードの一致のみで結果を抽出するため、意味の異なる同義語や文脈を理解することができません。
そのため、複雑な質問や意味を含む情報を検索するには限界があり、単純な一致を超える精度を求める場合には他の検索方法が必要です。

- 入力内容の文脈/意味を理解する検索手法
- 入力されたクエリの背後にある意味を解析
- 文脈に基づいた抽出が必要な場合に有効
セマンティック検索は、ユーザーの入力内容の文脈や意味を理解して検索を行う方法です。
この手法では、キーワードだけでなく、入力されたクエリの背後にある意味を解析し、より適切な情報を抽出します。
つまり、単語の意味やその関係性を理解し、検索対象となる情報を見つけ出すため、単語が一致しなくても関連する情報を見つけることができます。
特に質問が曖昧であったり複雑な時など、文脈に基づいた情報抽出が求められる場合に効果を発揮します。

- テキストデータを数値ベクトルに変換
➡その類似度で検索 - 語彙の違い/語順に関係なく類似した情報を検索可能
- 大規模データセットで有効
ベクトル検索は、テキストデータを数値のベクトル(多次元空間内のポイント)に変換し、その類似度に基づいて検索を行う手法です。
この手法では、語彙の違いや語順に関係なく、意味的に類似した情報を検索することができます。
AIが大量の情報の中から関連性の高い情報を瞬時に見つけ出し、高精度な回答を生成するため、特に大規模なデータベースや膨大なテキスト情報を扱う場面で重宝します。

- 検索アルゴリズムを組み合わせる検索手法
- 各手法の強みを活かす
ハイブリッド検索は、複数の検索アルゴリズムを組み合わせて検索を行う手法です。
具体的には、
- 全文検索 と セマンティック検索
- ベクトル検索 と セマンティック検索
というように検索手法を同時に使用することで、各手法の強みを最大限に活かし、精度を向上させようという方法です。
例えば、以下のようなやり方を行うことで、回答精度を更に高められる可能性があります。
- 全文検索で特定のキーワードを抽出
➡その結果に対してセマンティック検索
- ベクトル検索を使用して大量のデータから関連性の高い情報を抽出
➡その結果を意味的に精査
ハイブリッド検索の最大の利点は、異なる検索アルゴリズムの長所を組み合わせることで、特定の課題に対して最適な情報を抽出できることです。
これによりユーザーの質問が複雑であったり、意味のある情報が膨大である場合でも、精度の高い回答を迅速に生成することが可能になります。
チャンク分割と最適化:データの適切な処理
RAGの精度を高めるためには、データを適切なチャンクに分割することも重要です。
チャンクとは、データや情報を小さな単位、まとまりに分割したものを指します。
https://promo.digital.ricoh.com/ai-for-work/column/detail012/
テキストデータを適切に分割し、AIが効率よくデータを処理できるようにすることで、より正確な回答が期待できます。
データを
- どの単位で分割するか
- 隣接するチャンクとの重複度をどう調整するか
が精度向上に大きく影響します。
例えば文脈を保持しつつ、適切なサイズでチャンクを分けることで、より正確な情報抽出が可能になります。
フィードバックと改善:継続的な最適化
最後に、RAGの精度を維持し続けるためには、継続的なフィードバックが欠かせません。
ユーザーからのフィードバックを元に、データやプロンプトの改善を行い、AIの精度を常に向上させていきましょう。
AIの精度を評価するためには、
- 忠実度
- 関連性
- 再現性
といった評価指標を使用します。
これらの指標を基にAIの性能を測定し、必要に応じて改善を行います。
まとめ
今回紹介したRAGの精度向上のためのテクニックのまとめです。
これらの改善テクニックを実践することで、RAGを駆使したAIの精度を飛躍的に向上させることが期待できます。
AIが生成する回答がより正確で信頼性の高いものになり、ビジネスやプロジェクトの成果に大きな影響を与えるでしょう。
今後もRAGの活用は拡大していき、企業間の競争力にも関わるようになることが予想されるので、急ピッチで調査・活用をしていきましょう。